洛陽三十三所観音霊場
「洛陽三十三所観音霊場」とは
「洛陽三十三所観音霊場(らくようさんじゅうさんしょかんのんれいじょう)」とは、観音菩薩をまつる京都府京都市の三十三箇所の寺院からなる観音霊場。
近畿地方の広域にわたり巡拝が困難な西国三十三所観音霊場に代わるものとして、平安末期に後白河法皇が洛内の観音菩薩を祀る寺院の中から定めたとされている。
室町時代の1431年(永享3年)頃には行願寺(革堂)に始まり、北野天満宮で結願となる三十三所の札所が定着していたが、応仁の乱などで衰退。
江戸時代の1665年(寛文5年)には霊元天皇の勅命によって中興され六角堂に始まり清和院で結願となる三十三所の札所が庶民の間で人気を集めたが、明治維新直後の神仏分離令に伴う「廃仏毀釈」により再び衰退し以後は途絶えていた。
2005年(平成17年)4月4日に復活し、「平成復興」として清水寺で大法要も行われた。
参拝のしかた
公式納経帖(朱印帖)
2種類の公式納経帖を用意(六角堂、東寺、東向観音寺などの札所寺院に問い合わせ)
全て巡礼すると満願証が授与される(授与料1000円)
平成洛陽三十三所観音霊場会の事務局は北野天満宮境内にある東向観音寺内
先達
三十三の札所すべてを満願した者で、かつ先達としての自覚を持ち、身心修養に勤め、観音巡礼と信仰を深めて霊場発展のため力を尽せる個人を霊場会が公認する制度がある。
関連書籍
札所一覧
寺社名 | エリア | ポイント | |||
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第一番 | 六角堂 (頂法寺) |
三条寺町・四条河原町 | 如意輪観音 | |
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第二番 | 誓願寺 | 三条寺町・四条河原町 | 十一面観音 | |
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第三番 | 護浄院 (清荒神) |
京都御所 | 准胝観音 | |
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第四番 | 行願寺 (革堂) |
京都御所 | 千手観音 | |
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第五番 | 真如堂 (真正極楽寺) 新長谷寺 |
岡崎・吉田・鹿ケ谷 | 十一面観音 | |
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第六番 | 金戒光明寺 (黒谷) |
岡崎・吉田・鹿ケ谷 | 千手観音 | |
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第七番 | 長楽寺 | 祇園・東山 | 准胝観音 | 円山公園南東 |
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第八番 | 大蓮寺 (安産祈願の寺) |
岡崎・吉田・鹿ケ谷 | 十一面観音 | 東山二条西入 |
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第九番 | 青龍寺 (伽羅観さん) |
祇園・東山 | 聖観音(伽羅観音) | 八坂塔北側の小寺 |
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第十番 | 清水寺 善光寺堂 | 祇園・東山 | 如意輪観音 | |
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第十一番 | 清水寺 奥の院 | 祇園・東山 | 三面千手観音 | |
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第十二番 | 清水寺 本堂 | 祇園・東山 | 千手観音 | |
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第十三番 | 清水寺 朝倉堂 | 祇園・東山 | 千手観音 | |
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第十四番 | 清水寺 泰産寺 | 祇園・東山 | 千手観音 | |
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第十五番 | 六波羅蜜寺 | 祇園・東山 | 十一面観音 | |
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第十六番 | 仲源寺 (目疾地蔵) |
祇園・東山 | 千手観音 | 祇園四条通沿い |
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第十七番 | 三十三間堂 (蓮華王院) |
東山七条 | 千手観音 | |
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第十八番 | 泉涌寺塔頭 善能寺 | 東福寺・稲荷 | 聖観音 | |
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第十九番 | 今熊野観音寺 | 東福寺・稲荷 | 十一面観音 | |
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第二十番 | 泉涌寺 (御寺) |
東福寺・稲荷 | 楊貴妃観音 | |
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第二十一番 | 法性寺 | 東福寺・稲荷 | 千手観音 | 東福寺横 |
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第二十二番 | 城興寺 | 京都駅 | 千手観音 | 九条烏丸 |
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第二十三番 | 東寺 (教王護国寺) |
京都駅 | 十一面観音 | |
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第二十四番 | 無量壽院 長圓寺 | 京都駅 | 聖観音 | 下京区松原通大宮西入中堂寺西寺町 |
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第二十五番 | 泉涌寺 法音院 | 東福寺・稲荷 | 不空羂索観音 | |
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第二十六番 | 正運寺 | 二条城 | 十一面観音 | 中京区蛸薬師通大宮西入因幡町 |
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第二十七番 | 平等寺 観音堂 (因幡薬師) |
京都駅 | 十一面観音 | |
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第二十八番 | 壬生寺 中院 | 二条城 | 十一面観音 | |
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第二十九番 | 福勝寺 (瓢箪寺) |
北野・西陣 | 聖観音 | 上京区出水通千本西入ル |
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第三十番 | 地蔵院 (椿寺) |
北野・西陣 | 十一面観音 | |
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第三十一番 | 東向観音寺 | 北野・西陣 | 十一面観音 | 北野天満宮南 |
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第三十二番 | 廬山寺 | 京都御所 | 如意輪観音 | |
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第三十三番 | 清和院 | 北野・西陣 | 聖観音 | 上七軒南 |
「観世音菩薩(観音菩薩)」とは
観音菩薩とは
「観音菩薩(かんのんぼさつ)」とは、世の苦しみの声を聴いて(人々の音声を観じて)、その苦悩から救済する菩薩。
自在に姿を変え、人々の姿に応じて千変万化の相となる所から「六観音」とか「三十三観音」ともいわれる。
勢至菩薩とともに阿弥陀三尊の脇侍を務める場合も。
ちなみに「菩薩(ぼさつ)」とは 仏の位の次にあり、仏になろうとして修行に励む修行者のことをいい、または悟りを開く前の仏陀のことを指す。
六観音・七観音
聖観音菩薩(しょうかんのんぼさつ)
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超人間的な姿ではない、1面2臂の観音菩薩の基本形。
救うべき相手により三十三通りの観音に変身する。
宝冠をかぶって天衣をまとい、左手に蓮華や水瓶を持ち、蓮華の台座に乗っている姿が一般的。
六観音の一つ。
十一面観音(じゅういちめんかんのん)
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その名の通り頭上に11の顔を持ち、いつでも世の中を救うことができるように全ての方向を見守っているという。
病いの治癒など10種類の現世利益(十種勝利)と、地獄に堕ちずに極楽浄土に行けるなどの4種類の来世での果報(四種功徳)をもたらす。
頭頂部に阿弥陀如来の化仏を頂き、その周りの顔は悟りの表情をした仏面、慈悲の表情をした菩薩面、憤怒の表情をした瞋怒面(しんぬめん)、牙を見せ励ましの表情をした狗牙上出面(くげじょうしゅつめん)、悪行を大口を開けて笑う大笑面などの複雑な表情を見せている。
女神のようにふくよかな容姿に右手はまっすぐに下ろされ、左手には花瓶を持っている姿が一般的。
京都では六波羅蜜寺や京田辺の大御堂観音寺のものが有名。
六観音の一つ。
千手観音(せんじゅかんのん)
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正式名は「千手千眼観自在菩薩」で、千の手を持ち、その一つ一つの手掌に目がある。
千という数字はどんな人でも漏らさずに救済しようという慈悲の広大さを表わす。
延命や病気治癒などあらゆる現世利益にご利益。
造形上は27面42臂で表現されるのが一般的だが、奈良の唐招提寺のものは953本の手があるとのこと。
京都では三十三間堂のものや清水寺、東寺旧食堂、広隆寺旧講堂、法性寺、柳谷観音(楊谷寺)、峰定寺などにある。
六観音の一つ。
如意輪観音(にょいりんかんのん)
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如意宝珠と法輪の力により人々を救済する。
立像はほとんどなく坐像または半跏像で、片膝を立てて座り、肘をかけて指先を頬に当て、どうすれば人々を救えるのかと悩む思惟の姿、いわゆる半跏思惟像が特徴的。
またほとんどが六臂の像で、6本の手のうち2本に意のままに智慧や財宝、福徳もたらすという如意宝珠と煩悩を打ち砕くという法輪を持っている。
名前の由来はこの如意宝珠の「如意」と法輪の「輪」に由来している。
大阪河内長野にある観心寺のものは空海作と伝わり有名、京都では醍醐寺、六角堂(秘仏)、花の寺として有名な勝持寺の隣にある願徳寺(宝菩提院)、大報恩寺(千本釈迦堂)(六観音像の一つ)、平等寺(因幡薬師)、舞鶴の松尾寺などにある。
六観音の一つ。
不空羂索観音(ふくうけんさくかんのん)
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手に持つ縄(羂索)で人々の悩みを漏らすことなく救済する。
「不空」とは空しいものにしない(徒労に終わらない)、信じれば必ず願いが叶うという意味で、「羂索」は古代インドで狩猟や戦闘に用いた縄のこと。
一面三目八臂が基本形で、鹿の毛型を身にまとい、手には羂索、錫杖、蓮華、数珠などを持つのが一般的。
奈良時代に盛んに造られ、奈良の東大寺や興福寺のものが有名で、京都では広隆寺にある。
天台宗では六観音の一つ((真言宗では准胝観音を入れる)。
准胝観音(じゅんていかんのん)
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仏の母といわれ清浄と母性を象徴する。
女性を守護し安産・子授けの功徳があるという。
三目一八臂(手が18本で3つ目)の姿が一般的。
名前はサンスクリットの「チュンディー(cundii)」の音訳。
醍醐寺上醍醐の准胝堂や聖護院の積善院準提堂が本尊としている。
真言宗では六観音の一つ(天台宗では不空羂索観音を入れる)。
馬頭観音(ばとうかんのん)
その他の観音
楊貴妃観音(ようきひかんのん)
泉涌寺の観音堂に安置され、その美しさから8世紀の中国・唐代の皇帝玄宗が亡き楊貴妃を偲んで造らせたとの伝承を持つ。
実際には13世紀頃、中国の南宋時代の作と考えられていて、日本の仏像とはかなり質が異なっている。
三十三観音(さんじゅうさんかんのん)
阿弥陀如来の妻で、観音菩薩の母といわれる「白衣観音(びゃくえかんのん)」(東山の霊山観音はこれをイメージして造られた)、右手に柳の枝を持ち絵画に描かれることが多い「楊柳観音(ようりゅうかんのん)」以外はほとんど知られていない。
楊柳(ようりゅう)、龍頭(りゅうず)、持経(じきょう)、円光(えんこう)、遊戯(ゆげ)、白衣(びゃくえ)、蓮臥(れんが)、滝見(たきみ)、施薬(せやく)、魚籃(ぎょらん)、徳王(とくおう)、水月(すいげつ)、一葉(いちよう)、青頚(しょうけい)、威徳(いとく)、延命(えんめい)、衆宝(しゅうほう)、岩戸(いわと)、能静(のうじょう)、阿耨(あのく)、阿摩提(あまだい)、葉衣(ようえ)、瑠璃(るり)、多羅尊(たらそん)、蛤蜊(こうり、はまぐり)、六時(ろくじ)、普悲(ふひ)、馬郎婦(めろうふ)、合掌(がっしょう)、一如(いちにょ)、不二(ふに)、持蓮(じれん)、灑水(しゃすい)