椿(ツバキ)(Camellia)
椿とは?
「万葉集」の頃からよく知られた日本を代表する花木
DATA
学名は「Camellia Japonica」、英名は「Camellia」。
ツバキ科ツバキ属の常緑高木・照葉樹。
冬から春にかけて咲き、色は赤色・薄桃色(ピンク)・白色のほか赤と白の斑入系などがある、花は大きくやや筒型で花ごと散る。
薮椿は日本特産、17世紀にフィリピンを経由してヨーロッパにもたらされ園芸品種として広まった。
高さ5~6mの高木で、中には樹高18m・胸高直径50cmにも達する例も。
名前の由来
「ツバキ」の由来は、葉に厚みと光沢がある所から「艶葉木(つやばき)」「厚葉木(あつはのき)」が転訛した、落ちた花が刀の鍔のように見える所から「鍔木(つばき)」、あるいは韓国語の「冬柏(ツンバク)」に由来するなど諸説あり。
「椿」は日本で作られた漢字で、花が春に咲く木であることから。
学名・英名の「カメリア」はこの花をヨーロッパにもたらしたチェコスロバキア宣教師「ゲオルク・ヨーゼフ・カメル(Georg Joseph Kamell)」にちなむ。
歴史
国内
「古事記」において「都婆岐」、日本書紀でも「海石榴」の字で記述があり、また「万葉集」では「椿」のほか「都婆伎」「都婆吉」「海石榴」などの名前で11首が詠まれており、日本では古くから親しまれていた植物であることが分かる。
室町時代には鑑賞用として盛んになり、戦国時代には豊臣秀吉などにより茶花(茶の湯の花)としても好まれた。
江戸時代には品種改良が進み、「江戸」「上方」「尾張」「加賀」「富山」「越後」「山陰」「久留米」「肥後」と全国各地で多くの園芸品種が生まれている。
海外
また江戸時代の17世紀、1680年頃にイエズス会の宣教師で植物学者としても知られたゲオルク・ヨーゼフ・カメルが派遣先のフィリピンで花の種を入手してヨーロッパに初めて紹介。
1690年(元禄3年)にはオランダ商館の医師として約2年間長崎の出島に滞在したドイツ人のエンゲルベルト・ケンペル(Engelbert Kaempfer)も、帰国後の1712年に著した「廻国奇観」でこの花をヨーロッパに紹介している。
その後分類学の父として知られるカール・フォン・リンネにより、カメルの名前とケンペルの記述に基づき「Camellia Japonica(カメリア・ジャポニカ)」と命名された。
19世紀にはアレクサンドル・デュマの有名な小説「椿姫」にも登場するなど園芸植物として流行、アメリカへも渡ってさらに多くの品種が生まれている。
利用・用途
観賞用
日本を代表する花木のひとつで花も美しいことから、古くから観賞用の庭木や茶の湯の茶花として親しまれている。
その他
種子(実)を絞った椿油は古くは灯りなどの燃料油としてもよく使われたほか、現在も高級の食用油、整髪料として使用され、用途は非常に広い。
ただし花ごと散ることから、落首を想像させ武士かは敬遠されたといい、また現代においても競馬では落馬を連想させるため縁起が悪いとされる。
よく似た植物
日本でもっともよく知られているのは「薮椿(ヤブツバキ)」で、「椿」といえば通常は薮椿のことを指す。ほかに日本海側の山地に生息する「雪椿(ユキツバキ)」がある。
似ている花としては「山茶花(サザンカ)」やお茶の花は椿の仲間であり、サザンカはアメリカでは椿との区別がなくどちらも「カメリア」という名前で呼ばれる。
京都の椿スポット
見頃は冬から春にかけての1~4月と長く、早咲きのものは12月頃から花を咲かせる。
京都を含めた関西でも古くより親しまれている植物で、龍安寺には室町時代の椿が残る。
江戸時代には徳川秀忠の娘・東福門院和子を中宮とし修学院離宮を造営したことで知られる後水尾天皇からも愛された。
1630年(寛永7年)に誓願寺の安楽庵策伝が「百椿集」、1634年(寛永11年)には烏丸光広が「椿花図譜」を著し、そこには619種の椿が紹介されている。
「五色八重散椿」「曙」「菱唐糸」などの品種が有名。
寺社名 | エリア | ポイント | |
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大聖寺 (御寺御所) |
京都御所 | ヤブツバキ |
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地蔵院 (椿寺) |
北野・西陣 | 「椿寺」の通称を持つ 加藤清正が朝鮮から持ち帰り豊臣秀吉に献上され、北野の大茶会のの縁で送られた五色の散り椿「五色八重散椿」で知られる 現在のはその2代目で樹齢100年を超える |
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宝鏡寺 (人形寺) |
北野・西陣 | 「村娘」「熊谷」「月光」など |
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妙蓮寺 | 北野・西陣 | 早咲きで室町時代から有名な「妙蓮寺椿」徳川家康も愛でたという |
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二条城 | 二条城 | 1953年(昭和28年)頃より武田一乗寺農場・宝鏡寺・東京農業大学厚木農場などより譲り受けたものを植栽し繁殖 2007年(平成19年)3月の調査で90種400本が確認され、中でも北中仕切門~西北米蔵西側までの間に80品種約240本が集中する 12月頃より少しずつ咲き始め、3月下~4月中旬に集中して咲く |
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清水寺 成就院 | 祇園・東山 | 松永貞徳の「雪月花の庭」の一つとして知られる「月の庭」に侘助椿 |
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高台寺 月真院 | 祇園・東山 | 織田信長の弟・織田有楽斎が植えたとされる「有楽椿」 新選組を脱退した伊東甲子太郎が屯所を構えたことでも知られる |
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銀閣寺 (慈照寺) |
岡崎・吉田・鹿ケ谷 | 「椿垣」と呼ばれる侘助椿の生垣で有名 |
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法然院 | 岡崎・吉田・鹿ケ谷 | 椿の庭の「三銘椿」の花笠椿・貴椿(あてつばき)・五色散り椿で知られる |
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大豊神社 | 岡崎・吉田・鹿ケ谷 | |
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霊鑑寺 | 岡崎・吉田・鹿ケ谷 | 鹿ケ谷、後水尾上皇遺愛で天然記念物の「日光椿」のほか35種といわれる椿が植えられている、4月に特別拝観 |
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真如堂 (真正極楽寺) |
岡崎・吉田・鹿ケ谷 | |
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鹿王院 | 嵐山・嵯峨野 | 参道の両側に椿ロードの趣で椿の木が並んでいる |
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曇華院門跡 | 嵐山・嵯峨野 | 「竹の御所」の通称を持ち、尼寺霊場の一つで鹿王院の隣に位置 本堂北の中庭に日光椿と月光椿がある |
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金閣寺 (鹿苑寺) |
衣笠・御室・花園・太秦 | 方丈庭園の胡蝶侘助は後水尾天皇お手植えといわれ、幹回り135cmで大徳寺総見院に次ぐ大きさを誇る |
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等持院 | 衣笠・御室・花園・太秦 | 織田信長の弟・織田有楽斎ゆかりで樹齢400年を超える「有楽椿(胡蝶侘助)」で知られる |
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龍安寺 | 衣笠・御室・花園・太秦 | 加藤清正が朝鮮から持ち帰り豊臣秀吉に献上し賞賛されたという「侘助椿」が残る |
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平岡八幡宮 | 高雄 | 本殿へ向かう参道の左に多数の椿が植えられ「椿の小道」を形成している、白玉椿が有名 椿の絵柄の絵馬や椿の土鈴を授与、「椿を愛でる会」も開催 |
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御香宮神社 | 伏見・桃山 | 参道左手横の参集館の傍らにある「おそらく椿」で有名 初代伏見奉行だった小堀遠州が「おそらくこれに勝る椿は他にない」と激賞したのにちなみ命名、紅白まじりの散椿で高さ約3m、晩咲き(3月下~4月下) |
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城南宮 | 鳥羽・竹田・淀 | 約300本が「源氏物語花の庭」とも呼ばれる神苑の各所で見られる、古くから自生するヤブツバキに加え珍しい椿が3月にかけて順に咲く 2月中~3月下にかけて「しだれ梅と椿まつり」が開催され150本の枝垂れ梅と同時に楽しめる |
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松花堂 (松花堂庭園・美術館) |
八幡 | 椿展を開催、庭植え椿200種、切花や盆栽、鉢植えなど約800種 |
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雙栗神社 | 久御山 | 黒椿など数百本の山椿 |
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浄安寺 | 久御山 | 233種類の椿 |
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大徳寺 総見院 | 紫野・鷹ヶ峯 | 豊臣秀吉が織田信長の菩提を弔うために創建 玄関前にある秀吉が千利休から譲り受けたという遺愛の胡蝶侘助の椿は樹齢400年超の日本最古 京都市天然記念物 |
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京都府立植物園 | 北山・上賀茂 | 園北東部一帯に約4,000平方メートルの「つばき園」があり、日本古来の品種を中心に約250品種600本を植栽する |
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柊野の散り椿 (奥村家) |
北山・上賀茂 | 「五色散り椿」は樹齢400年超、樹高9m、枝張100平方メートルの巨大な椿で京都市指定天然記念物 |
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武田薬品工業 京都薬用植物園 | 一乗寺・修学院 | 3月中旬~4月、ツバキ園にて様々な椿の原種のほか江戸時代に作出されたものやユキツバキを含め、昭和30年代から収集した560種余の品種を栽培・展示 |
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比叡山延暦寺 | 大原・八瀬・比叡山 | 西塔地区にある椿堂の左手 椿堂は聖徳太子が比叡山に登った際に椿の枝を元々あった堂のそばに立てて置いたところそれが根付き育ったことから名付けられたと伝わる |
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花尻の森 | 大原・八瀬・比叡山 | 藪椿が多く群生し京都市屈指の落ち椿(散椿)の名所として知られる |
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楞厳寺 (丹波のカラス寺) |
綾部 | |
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金峰神社 | 京丹後 | 京丹後市峰山町 |
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薬師ヶ丘さくらの森公園 | 京丹後 | 京丹後市峰山町 |
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舟屋の里公園 | 宮津・伊根 | |
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舞鶴引揚記念館 (引揚記念公園) |
舞鶴 | |
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舞鶴自然文化園 | 舞鶴 | アジサイの名所としても知られるが、椿も有名 5ヘクタールの敷地に1500種3万本を植栽 |
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滝の千年ツバキ公園 | 与謝野町 | 「滝の千年ツバキ」は樹齢1200年で日本最古の黒椿で京都府指定天然記念物、椿文化資料館も |