萩(ハギ)(Bush Clover)
萩とは?
どこか控えめな美しさが魅力的な秋の七草の一つ
DATA
学名は「Lespedeza(レスペデザ)」、英名は「Bush Clover」。
分類上は単に「萩(ハギ)」と呼ばれる植物はなく、約20~40種の野生種や多くの園芸種があるというハギ属の植物を総称としてこう呼ぶが、一般的に「萩」といえば次の2種を特に指す場合が多い。
「ヤマハギ(山萩・学名 Lespedeza Bicolor)」
日本の山野でごく普通に見かける
「ミヤギノハギ(宮城野萩・学名 Lespedeza Thunbergii)」
宮城県の県花で枝が枝垂れ観賞用として花も美しい
マメ科ハギ属の落葉低木で、本来は木だが「秋の七草」の一つとして知られる。
夏から秋にかけての7月~10月(品種により異なるが一般的な見頃は9月ぐらい)、弓形に伸びたしなやかな枝先に1~2cmほどの蝶の形をした小花を多数咲かせる、花の色は赤紫色または白色、葉の形は楕円で小葉が3つつく。
原産地は日本や韓国、中国といった東アジアや北米東部、オーストラリアの温帯・亜熱帯地域、日本にも古くから自生しほぼ全域に分布。
高さは2~3m。
名前の由来
「ハギ」の名前の由来は毎年古い株から新しい芽がよく出ることから「生え芽(はえき)」とされ、それが転訛したなど諸説あり。
「萩」の字は平安中期の漢和辞書「和名類聚抄(和名抄)」に初めてその名が見え、秋を代表する草花であることにちなむ(中国では「胡枝子」と表記され「萩」は別の植物を意味する)。
秋のお彼岸に供えるぼた餅は秋を代表する「萩」ちにちなんで「御萩(おはぎ)」名づけられた。
歴史
古くから日本人に親しまれ「万葉集」では141首と最もよく詠まれている(山上憶良が秋の七草を詠んだ「萩の花 尾花 葛花 なでしこが花 をみなへし また 藤袴 朝顔が花(桔梗)」が有名)。秋の十五夜では団子やススキと一緒に萩が供えられることも。
利用・用途
観賞用
日本各地の山野に普通に自生するほか、鑑賞用の庭木としても広く利用されている。
その他
寒暖に強く痩せた土地でも育つことから山の斜面の緑化資材として用いられている。
その他にも山菜として天ぷらやおひたしなどに料理されて食用されたり、葉は家畜の飼料、枝はほうきや垣根の材料などに利用されたりする。
また根を乾燥させ煎じたものは生薬として用いられ、めまいやのぼせを静める働きが期待される。
よく似た植物
「ヤマハギ(山萩)」は全国の山野に自生し枝はほとんど枝垂れないが、「ミヤギノハギ(宮城野萩)」は日本海沿岸の山地に自生し枝が長く枝垂れるのが特徴。
その他に代表黄なものとして下記の品種がある。
「シロバナハギ(白花萩)」
「マルバハギ(丸葉萩)」
「キハギ(木萩)」
「ツクシハギ(筑紫萩)」
「ニシキハギ(錦萩)」
「マキエハギ(蒔絵萩)」
またハギ属ではないが萩と呼ばれているものとして下記の品種がある。
「ヌスビトハギ(盗人萩)」
「ヒメハギ(姫萩)」
「ミソハギ(禊萩)」
京都の萩スポット
寺社名 | エリア | ポイント | |
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大聖寺 (御寺御所) |
京都御所 | |
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梨木神社 | 京都御所 | 「萩の宮」とも呼ばれ京都でも有数の萩の名所として知られる 参道から社殿前にかけて数百株といわれる紅白の萩が咲き誇る 9月の第3または第4日曜日前後には「萩まつり」を開催、献華式や弓術披露のほか大蔵流狂言や舞、琴、尺八などの奉納行事も行われる |
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青蓮院門跡 | 祇園・東山 | 華頂殿の東南角に西行ゆかりの「宮城野の萩」 |
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高台寺 | 祇園・東山 | 小堀遠州作の庭園はハギの名所として有名 与謝蕪村が「黄昏や萩に鼬(イタチ)の高台寺」と詠んだことで知られる |
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霊山観音 | 祇園・東山 | 高さ24mの大きな観音尊像を囲むように庭一面に100株を越える赤と白の2色の萩の花が咲く 見頃の時期に合わせ毎年9月には「萩鑑賞会(萩まつり)」を開催する |
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平安神宮 | 岡崎・吉田・鹿ケ谷 | 神苑を入ってすぐの南神苑(紅枝垂れ桜のエリア)と西神苑の間付近に多くの萩、6月にも咲き出す夏萩なども品種もある |
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南禅寺 | 岡崎・吉田・鹿ケ谷 | 法堂前 |
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法然院 | 岡崎・吉田・鹿ケ谷 | 白萩 |
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真如堂 (真正極楽寺) |
岡崎・吉田・鹿ケ谷 | 本堂前や三重塔そば |
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迎称寺 (迎稱寺) |
岡崎・吉田・鹿ケ谷 | 一条道場 真如堂の北、寺を囲む土塀に沿って咲く、「洛東九番萩の霊場」の石碑 |
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常林寺 (萩の寺) |
岡崎・吉田・鹿ケ谷 | 出町柳駅近く、若き日の勝海舟の京における宿坊だった寺院 「萩の寺」として知られ境内を覆い尽くすように萩が咲き乱れる |
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天龍寺 | 嵐山・嵯峨野 | 多宝殿から北門へ向かう途中に整備された「百花苑」付近に赤と白の花 |
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二尊院 | 嵐山・嵯峨野 | 総門をくぐってすぐ、紅葉の馬場の参道や弁天堂の前など |
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東福寺 天得院 | 東福寺・稲荷 | 本堂内の華頭窓からの紅葉風景と桔梗で有名だが、二度咲きの萩でも知られる 土塀の外側にハギが植えられ、6月上~中旬と9月上~中旬の二度楽しめる |
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上賀茂神社 | 北山・上賀茂 | ならの小川の川沿いや本殿前のみたらし川付近 |
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光悦寺 | 紫野・鷹ヶ峯 | 光悦垣付近 |
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養泉寺 | 福知山 | 丹波の萩寺として有名、1950年代頃にハギの植栽を始め、現在は本堂前や駐車場周辺などで白萩、錦萩、宮城野萩の3種約150株が楽しめる |
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岩王寺 | 綾部 | 三筆の一人・嵯峨天皇ゆかりの寺院でかやぶきの本堂が印象的 9月中旬に萩まつりを開催、筆供養や琴の演奏奉納、茶席や手打ちそば等の販売、芸術家の作品展示などが行われる |
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如意寺 | 京丹後 | 京丹後市久美浜町、9月上~下旬、白萩 |
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多禰寺 | 舞鶴 | 萩の寺として有名、参道や宝物殿の脇のほか、宝物殿奥の「萩苑」の入口から背丈ほどの高さの300本のシラハギの回廊が続く |