近畿三十六不動尊霊場
「不動明王」とは
伝教大師・最澄の開いた天台宗(台密)や弘法大師・空海が開いた真言宗(東密)で重要視される「密教(みっきょう)」とは秘密仏教の略で、釈迦が現世において人々を救済するために分かりやすく説いた華厳経・般若経・涅槃経・法華経などの「大乗仏教=顕教(けんぎょう)」に対し、宇宙の真理そのものである大日如来が説いた究極の教えのことをいう。
この点一般の民衆には秘匿された、師資相承によって伝持(師弟関係によって口伝)される点に大きな特徴がある。
大日如来は密教における悟りの境地を視覚的に描いた「曼荼羅(まんだら)」においてその中心に位置し、宇宙のすべてを司る中心的な存在であり、あまりに崇高で直接には拝みにくい。また大日如来が衆生を教化する際に通常の姿のままでは教化できない。そこで大日如来の化身として現れたのが「不動明王」である。
「不動明王(ふどうみょうおう)」は真言密教の教主・大日如来の化身とされ、忿怒(ふんぬ)の姿をもって現れたもので、その見た目は岩上に座して火炎に包まれた姿で右手に剣、左手に縄を持ち、二童子を従える姿が一般的。
曼荼羅において五大明王の中心をなし、その憤怒の形相により悪魔を降伏させて全ての障害を打ち砕いてくれるほか、仏道に従わない者は厳しくも優しい慈悲の心と智慧の炎で導き救済してくれる役目も担っており、行者守護・除災招福・戦勝祈願・悪魔退散などとりわけ現世利益を求める人々から厚い信仰を集めている。
日本では「お不動さん」の呼び名で親しまれており、観音菩薩や地蔵菩薩とともに古くより人気が高い。
「近畿三十六不動尊霊場」とは
「近畿三十六不動尊霊場(きんきさんじゅうろくふどうそんれいじょう)」とは、近畿にある不動明王を祀る寺院を巡拝する霊場めぐり。
大阪・四天王寺を中心に大阪府、京都府、兵庫県、滋賀県、奈良県、和歌山県の近畿地方の2府4県にある36ヶ所の「不動尊(不動明王)」で構成されている。
早くから庶民の信仰の対象として、観音霊場や地蔵霊場と共に盛んに行われていたのを1979年(昭和54年)に古寺顕彰会が中心となり改めて霊場めぐりとして開設した。
不動尊霊場では最古参であり、各地方にある三十六不動尊霊場の先駆けとなった霊場だといわれている。
宗派にとらわれずに一般の人々の立場からの意見を取り入れた形で選定されており、京都や大阪の歴史ある著名な寺院が数多く並んでいるのが特徴。
この点36の札所数は、不動明王の眷属(けんぞく=親族・同族・従者・配下・家子などの意味)が三十六童子であることに由来。
また人間の煩悩三十六支を表し、三十六ヶ寺を巡拝することによって煩悩を消除する意味も含まれているのだという。
参拝のしかた
朱印帳
各寺院では寺院名を金文字で名入れした水晶玉「不動念珠玉」が授与される。
1つの寺で1つずつ授かり36個揃うと「不動念珠」が完成。三度巡礼し108個揃えると「本連念珠(装束念珠)」となる。
巡拝諸経要集(経本)は800円。
関連書籍・DVD
京都の札所一覧
寺社名 | エリア | ポイント | ||||
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13 | 嵯峨山 | 大覚寺 | 嵐山・嵯峨野 | 五大明王 | 真言宗大覚寺派大本山 | |
14 | 大内山 | 仁和寺 | 衣笠・御室・花園・太秦 | 水掛不動尊 | 真言宗御室派総本山 | |
15 | 五智山 | 蓮華寺 | 衣笠・御室・花園・太秦 | 五智不動尊 | 真言宗御室派別格本山 | |
16 | 魚山 | 大原三千院 | 大原・八瀬・比叡山 | 金色不動明王 | 天台宗 | |
17 | 曼殊院門跡 | 一乗寺・修学院 | 黄不動明王 | 天台宗 | ||
18 | 聖護院門跡 (森御殿) |
岡崎・吉田・鹿ケ谷 | 不動明王 | 本山修験宗 | ||
19 | 青蓮院門跡 | 祇園・東山 | 青不動明王 | 天台宗 | ||
20 | 五百仏頂山 | 智積院 | 東山七条 | 智彗不動(麦つき不動) | 真言宗智山派総本山 | |
22 | 北向山 | 北向山不動院 (北向のお不動さん) |
鳥羽・竹田・淀 | 不動明王 | 天台宗系単立 | |
23 | 醍醐山 | 上醍醐寺 (醍醐寺) |
山科・醍醐 | 五大力不動明王(五大力さん) | 真言宗醍醐派 | |
24 | 神遊山 | 岩屋寺 (大石寺) |
山科・醍醐 | 不動明王 | 曹洞宗 |