京都府城陽市寺田水度坂、JR奈良線の城陽駅から東へ約800m、近鉄京都線寺田駅から東へ約1.5km、鴻ノ巣山の麓、府立城陽高校の北側に鎮座する神社で、旧寺田村の産土神。
祭神は皇祖神にして日本国民の総氏神である「天照皇大御神(あまてらすすめおおみかみ)」のほか、高木神という別名を持ち天照大神とともに高天原を主宰する「高御産靈神(たかみむすびのかみ)」、そして初代・神武天皇の祖母にあたる「少童豐玉姫命(わだつみとよたまひめのみこと)」で、水を司る神様を祀る神社として知られています。
社伝によると、創祀は平安初期といわれていますが、奈良時代の713年(和銅6年)に編纂された平安遷都以前の山城国の文化や風土・地理などについて記録された「山城国風土記」逸文に「久世の郡水渡の社祗社」とあることから、風土記の編纂された奈良時代には存在したと考えられる古い歴史を持ちます。
また水度(みと)は「水処」とされ、水禍の絶えない地であったことから、水防の神または農耕の守護神として祀られたとも、更には奈良時代のはじめに水主神社と同じく火明命を祖とする一族である水主氏(みずしし)により当地一帯の治水作業の過程で創建されたともいわれています。
清和・陽成・光孝の3代の天皇時代(858-87)の正史である「三代実録(日本三代実録)」によれば、清和天皇の時代の859年(貞観元年)に従五位の下の神位を授けられ、また平安中期の927年(延長5年)にまとめられた当時「官社」に指定されていた全国の神社一覧である「延喜式神名帳」には「水度神社三座」と記され、小社に列せられています。
そして元々は現在地よりも東、鴻ノ巣山の峰続きにあたる大神宮山にあったといいますが、鎌倉時代の1268年(文永5年)に現在地に移され、以来寺田郷の産土神として崇敬を集めるようになり、現在に至っています。
本殿は一間社流造、檜皮葺の屋根に正面に大きな千鳥破風、庇の正面中央には透かし彫りの唐草と笹りんどうをあしらった欄間が付けられた簡素にして優美な建物で、棟札によれば室町中期の1448年(文安5年)の建立とされる城陽市で最古の建造物で、国の重要文化財に認定されています。
そしてその他にも境内社として、天満宮社・大神宮社・八幡神社・松尾神社・春日神社・日吉神社・加茂神社・厳島神社・稲荷神社・竜王神社が祀られています。
またJR城陽駅から南へ約200mの「一の鳥居」から二の鳥居を経て本殿まで東へ伸びる約600mの緩やかな登り坂と松並木の続く「水度参道」は、かつては参道にお茶屋が軒を連ね、参拝客で賑わっていたと言われていて、現在も周辺が宅地化した中で、豊かな自然環境を保持しているとして「京都の自然200選」にも選ばれています。
文化財としてはまず、京都府登録文化財に指定されている「おかげ踊り図絵馬」が知られています。
「おかげ踊り」とは、江戸時代に伊勢神宮へ参拝する「お伊勢まいり」が流行し、大和街道一帯が伊勢神宮へ向かう舟旅の乗客で宿場町として栄えていた頃、伊勢神宮の「おかげ」と感謝の気持ちを込めて「おかげ踊り」と名付けられ奉納されていたという踊りで、現在も地元の有志「おかげ踊り保存会」により伝承され、水度神社で踊りが奉納されているといいますが、この絵馬は1830年(文政13年)11月1日に寺田村北東町の人々が神社に奉納した踊りの様子を描いたものといい、社務所にて観覧することができます。
その他にも湯立て神事に使われていたと考えられ、銘文から1425年(応永32年)の作成とされる「鉄湯釜」や、鎌倉前期にさかのぼる写経で、村落における信仰の歴史を知る貴重な資料となっている「大般若経601巻、経箱7箱(城陽市歴史民俗資料館に寄託)」が城陽市指定文化財となっています。
行事としては例年9月30日から10月2日にかけて行われる「例大祭」は、寺田祭ともいわれれ古くから盛大に執り行われてきたといい、地域氏子の繁栄の祈願や五穀豊穣に感謝して行われる秋祭で、神社と御旅所の間にて神輿巡行が行われるほか、前日の宵宮では御旅所にて巫女が鉄湯釜の湯を笹によって参拝者に振りまく「湯立て神事」も行われます。
この他にも神社境内から東側の鴻ノ巣山運動公園までの間には「鴻ノ巣山散策路」が整備されています。
「鴻ノ巣山(こうのすやま)」は京都府南部にある城陽市の中心部に位置する標高118mの山で、古くから町のシンボルとして親しまれてきましたが、1998年(平成10年)10月に近鉄寺田駅やJR城陽駅から水度神社の参道と境内を通り抜け、鴻ノ巣山頂上を経て城陽市総合運動公園(鴻ノ巣山運動公園)へと続く自然豊かな散策路となり、城陽市民の憩いの場となっています。
ハイキングや運動、森林浴や散策にも最適なほか、展望台や東屋なども設置されおり、とりわけ山頂からパノラマに広がる城陽市内や木津川対岸の山並みなどの景色は実に見事です。
また学術的にも貴重な新種のキノコなど300種類以上ものキノコが自生しているというアカマツやクヌギ、コナラなどの樹木からなる雑木林が広がるほか、「さくら見台」を中心とした桜をはじめ、花しょうぶ池や山の斜面のツツジなど、四季折々の草花を楽しむこともできます。