「大江山」は丹後国と丹波国の境界、現在の京都府福知山市大江町と与謝野郡与謝野町、宮津市の境に位置し、大江山という山はなく、一番西にある赤石ヶ岳から千丈ヶ嶽、鳩ヶ峰、鍋塚まで、標高600m~800mの山々が東西に連なる大江山連峰を総称して大江山と呼んでいます。
またこの中で一番高い山が二等三角点のある標高832.5mの千丈ヶ嶽であることから、大江山山頂というと通常は千丈ヶ嶽を意味することになります。
連山の山頂からの山々を見渡す雄大な景色は見事なほか、また植物の宝庫としても知られ、千丈ヶ嶽8合目の鬼嶽稲荷神社の付近ではブナやミズナラの原生林が残り、またツキノワグマや鹿や猪などのなど動物も多く生息し、京都でも屈指の探鳥地でもあるなど、豊かな自然環境が多く残されていることから、2008年(平成19年)8月3日に「丹後天橋立大江山国定公園」として国定公園に指定されています。
この他にも大江山は京の都の姫をさらっていった酒呑童子(しゅてんどうじ)を、平安中期の武将・源頼光(みなもとのよりみつ 944-1021)が四天王筆頭の渡辺綱(わたなべのつな 953-1025)、金太郎の幼名で知られる坂田金時(さかたのきんとき 956-1012)、碓氷貞光(うすいさだみつ 954?-1021)、卜部季武(うらべのすえたけ 950?-1022?)のいわゆる「頼光四天王(らいこうしてんのう)」を従え退治するという「大江山鬼退治伝説」の舞台としても知られていて、付近には「鬼の洞窟」などの鬼伝説にまつわる場所も点在し史跡めぐりができるほか、福知山市大江町では「酒呑童子の里」として交流博物館などの鬼に関連した施設も整備されています。
また近年は大江山連峰とその周辺一帯を巡る「大江山連峰トレイル」が人気なほか、「大江山一斉登山」や「よさの大江山登山マラソン」などの大会のコースにもなっています。
最高峰である「千丈ヶ嶽」への主な登山道は3ルートあり、
福知山方面からは、酒呑童子の里の大江山グリーンロッジ(大江山の家)を起点に千丈ヶ原川ルート、鬼嶽稲荷神社登山口を経て千丈ヶ嶽へ
宮津方面からは、普甲峠や航空管制塔を起点に鬼の岩屋、鍋塚、鳩ヶ峰を経て千丈ヶ嶽へ
そして与謝野町方面からは、北陵総合センターや加悦双峰公園を起点に千丈ヶ嶽へ
その他にも赤石ヶ岳や鳩ヶ峰、鍋塚を絡めて数多くの登山ルートが整備されており、多くのハイカーや登山客がハイキングや登山を楽しんでいます。
そして「鬼獄稲荷神社」は京都府福知山市大江町北原、千丈ヶ原川ルートから向かった千丈ヶ嶽の8合目付近、標高640mの地点にあり、頂上まであと1.2kmの所に鎮座する神社です。
古くはもっと頂上近くにあったと伝えられ、人々は大江山のことを「御嶽」と呼んでいたといい、また社伝によると四道将軍として丹波へ派遣された丹波道主命が、ここ丹波の地で土蜘蛛を討った父・日子坐王(彦坐王、神功皇后の高祖父)を崇め、その旧蹟に神祠を建立したとも伝わっています。
それと同時に大江山は修験道の山でもあったといい、一帯には修験の遺跡も多く残っていて、本殿右の小祠「はしくらさん」もその一つであると考えられています。
その後、江戸後期の弘化年間(1844-47)に社殿が現在地に移され、この際に伏見稲荷大社の分霊を勧請し社名も「鬼嶽稲荷」と改められたといい、それ以来、当地方の主産業であった養蚕や稲作の神として、農民たちの厚い崇敬を集めてきました。
境内は「森林浴の森100選」にも選定されているブナを主とする広葉樹林の原生林に囲まれて緑が豊かな一方、境内に入ってすぐ左手に視界が大きく開けている部分があり、展望台が設けられていて周辺の山々を見渡す見事な眺望を楽しむことができます。
そしてとりわけ有名なのは秋の早朝に見ることができる「雲海」で、乳白の中に山々がまるで島のように浮かんで見える光景は幻想的かつ息を飲む美しさで、近畿でも随一との呼び声もあるほどです。
雲海は前日の日中と翌日の夜間から早朝にかけて気温差があり、快晴かつ風がない状態であれば高い確率で発生するといい、由良川流域は日中と夜間とで温度差がとりわけ大きいことから霧が発生しやすいといわれ、また神社までは自動車道が整備されており、ロードバイクや車で登ることも可能なことから、早朝にも関わらず多くの見物客が訪れます。
この雲海をはじめ大江山連峰の美しい山々など観光資源を数多く有していることから、福知山市観光協会では大江山と鬼嶽稲荷神社一帯を「大江山連峰・ブナの原生林・雲海」として「福知山十景」に選んでいます。