京都府船井郡京丹波町質美庄和ノ上、京都府の北部、標高500m前後の丹波高地に位置する京丹波町の北東部・旧瑞穂町に鎮座する誉田分命(ほんだわけのみこと)(応神天皇)を主祭神として祀る八幡宮で、「質美」と呼ばれる集落の氏神として崇敬を集める神社。
「質美」は周囲を山に囲まれた谷間に位置する山村地域で、古くより京と丹波・丹後を結ぶ山陰道の街道筋にあたり、最も古いもので1023年(治安3年)の石清水文書に「質美庄」の名が、また保元・平治の乱の頃の1158年(保元3年)の文書にもその名が見られるといいます。
これらの古文書からかつてこの地は石清水八幡宮領の荘園だったことが分かり、このことから八幡宮が勧請されたものと考えられていて、社伝では平安中期の天暦年間(947-57)に現在地に鎮座したとされています。
その後、江戸時代には幕府領や旗本領、綾部藩領、亀山藩領、等持院領と領主は幾度も変更となりましたが、地域の産土神として厚い信仰を集め続けて現在に至っています。
現在の「本殿」は五間社切妻造の建物で、度々の兵火で焼失した後、江戸後期の1796年(寛政8年)に再建されたもので、産子集会所とともに京都府登録文化財に登録。
また境内の南を走る府道26号沿いの入口からこの本殿に至るまで約500mの長い参道には、「質美八幡宮のスギ・ヒノキ並木」として「京都の自然200選」にも選ばれている樹齢約400年のスギやヒノキなどの古木・巨木が林立し、境内全体が京丹波町指定文化財(史跡)となっているほか、「八幡宮文化財環境保全地区」として京都府文化財の環境保全地区にも選定されています。
そして大スギと大ケヤキは2010年(平成22年)2月に「鎮守の古木」として京丹波町の天然記念物に指定されたほか、静寂に包まれた荘厳なたたずまいの境内は近年パワースポットとしても知られるようになり、また映画の撮影にも使用されているといいます。
行事としては毎年10月中旬に開催される「秋祭り(曳山鉾祭)」が知られていて、山鉾・屋台が巡行する曵山行事で、虎や竜、天女、獅子の見送りなどで豪華絢爛に飾られた4基の曳き山鉾とこれを囃す4台の屋台が、笛や太鼓で奏でられるお囃子の音とともに古式ゆかしく、樹齢にして数百年を経た杉並木の続く約400mの参道をゆっくりと練り歩いていく豪華なお祭りで、日本三大祭の一つにして京都三大祭の一つでもある京都の「祇園祭」のミニ版ともいわれ、普段は静かな境内が参詣者で大いに賑わいます。
山車と囃子屋台が組み合わさった曳山行事は府内でも珍しといい、1987年(昭和62年)には「質美の曳山行事」として「京都府無形民俗文化財」にも指定されています。